若手との1on1でよく話す内容を、備忘も兼ねてここに残しておく。
「だって仕事でしょ」と「所詮仕事でしょ」
仕事への向き合い方には、大きく2つのベクトルがある。
- 「だって仕事でしょ」
- 仕事なのだから、やるべきことをやるという立場
- 「所詮仕事でしょ」
- 仕事なのだから、自分を犠牲にしてまで無理はしないという立場
これは善悪ではなくスタンスの話であり、0 か 1 かの選択ではない。 状況によってグラデーションがある。
自分にオーナーシップを持てる仕事なら「だって仕事でしょ」で臨めるし、そうでなければ「所詮仕事でしょ」になりうる。 もちろんオーナーシップを持てる範囲は人それぞれだし、同じ人でも状況によって変わる。 ワークライフバランスは重要だし、線引きは自分で決めればよい。
ユーザーにとって、理由や背景は関係ない
ただし、そのスタンスはユーザーには関係がない。
例えば事件現場に警察官がいたら、私たちは問題解決への行動を期待する。 「1年目なので対応しません」と言われたら納得はできないはずだ。実際には年次に関わらず、応援を呼びつつ最善を尽くす責務がある。
火災現場で消防士が「二日酔いで今日はパフォーマンスが低いです」と言うことも許されない。 執刀医やパイロットならなおさらだ。極端に聞こえるかもしれないが、職務に対する倫理観は程度の差こそあれ常に求められる。
大事なことなので繰り返す。 ユーザーにとって、あなたがその仕事をしている理由や背景は関係ない。
ソフトウェアエンジニアならこの記事も読んでほしい。
一行のログの向こうには、一人のユーザがいる – @ihara2525 on Tumblr
モチベーションに依存して仕事をしない
「だって仕事でしょ」でいくにはオーナーシップが必要で、そのためのWill(やりたいことだ)は重要だ。 モチベーションが高いに越したことはないし、情熱を持って働く人は魅力的だと思う。
ただし、一時的な感情やモチベーションに依存しているうちは成果は安定しない。 よく、「ヒト」ではなく「コト」に向かうことが重要だと言われるが、モチベーションを理由にしているうちはベクトルが自分=ヒトに向いている。
「ヒト」ではなく「コト」に向かうとは、感情の波ではなく目的と必要条件に基づいてそれを達成するためにベストを尽くすということだ。 だからこそ、仕事のスタンスとして「だって仕事でしょ」を基軸に据える。
似た趣旨の話はDeNAの南場さんも書いているし、同僚の
id:kiyo-shit も触れている。
どうやったら「コト」に向き合えるのか
唯一の正解はない。
人によって価値観やWillの源泉が違うからだ。 「コトに向き合え」は「Willを0」にしろ、という話ではなく、自分のWillを理解し、その解釈を拡張することだ。
例えば以下のような考え方のアップデートができれば、仕事に対する見え方も変わってくる。 自分は学習欲が高いので2のアプローチは相性が良い。
- 自分の特性に合わせてアクションを設定する
- ストレングスファインダーで「責任感」が上位なら「チームと約束する」
- 「調和性」が高いなら「このメンバーとなら頑張れる」と捉える。
- 枠組みの変換(リフレーミング)
- 「誰かがやらねばならない×自分は未経験=新しい学びがある」と再定義する。
Willを無視して嫌な気持ちで働けという話ではない。 自分のWillを理解し、それに基づいて行動しながら、ベクトルを「コト」に合わせる。 結果として、仕事への向き合い方が変わり、成果も安定するのだ。
おわりに
仕事は人生のすべてではない。 ただ、長い時間を費やすのなら、楽しいほうがいいし、成果は出たほうがいい。 ここに書いたのは、そのための考え方のひとつとして覚えておいてほしい。